歯科で使用される主な金属の元素と特徴
金(Au) |
特徴 |
- 柔らかく、可鍛性があり、重く、光沢のある黄色(金色)をしています。非常に柔らかい物質で、展性に富んでいます。最も薄くのばすことができる金属であり、1gあれば1平方メートルまでのばすことができます。
- 金は熱伝導、電気伝導ともに優れた性質を持ち、空気に浸食されず、熱、湿気、酸素、その他ほとんどの化学的腐食に対して非常に強い特性を持っています。
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長所 |
- 耐変色性、耐食性を増し、延性を高め、加工性が良くなる。
- 他元素と合金化しやすい。
- 銅を伴って時効硬化する。
- ※時効硬化=熱処理および加工などによって不安定状態にある金属の性質が、時間の経過とともに変化し、硬度を増す現象。
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短所 |
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白金(Pt) |
特徴 |
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白金族元素の一つで、銀白色の金属です。プラチナとも呼ばれます。化学的に非常に安定しているため、装飾品に多く利用される一方、触媒として、自動車の排気ガスの浄化をはじめ多方面で使用されています。
- 展延性に富み、高温で熱しても変化せず、王水(濃硝酸1、濃塩酸3の割合の混合液)以外の酸には溶けません。
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長所 |
- 金と合金化させることによって、硬さ、引張強さなどの機械的性質が向上する。
- パラジウムより耐食性が高い。
- 銅を伴って、熱硬化、時効硬化する。
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短所 |
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チタン(Ti) |
特徴 |
- チタン族元素の一つで、単体は銀白色の金属。軽くて硬く、生体親和性、耐食性、耐熱性にすぐれています。チタンの性質は化学的、物理的にジルコニウムに近いと言われています。
- チタンは大変強い物質である一方、質量は鋼鉄の45%と非常に軽いです。また、アルミニウと比べると、60%程度質量が大きいものの、約2倍の強度を持っています。これらの影響により、チタンは他の金属よりも金属疲労が起こりにくいのが特徴です。
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長所 |
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短所 |
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パラジウム(Pd) |
特徴 |
- パラジウムは柔らかい銀白色の金属で、白金族に属す希少金属の一つです。柔らかさと耐食性を兼ね備えた金属ですが、強い酸(硝酸など)には溶けます。
- 自分の体積の 935 倍もの水素を吸収するため、水素吸蔵合金として利用されています。
- パラジウムは主にロシアと南アフリカで生産されていますが、供給はほぼロシア一国に依存しています。近年は産出量が激減しているため、入手が困難な傾向があります。
安定した供給がなされないため、素材価格の高騰を繰り返しているのが現状です。
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長所 |
- 白金に近い長所をもっている。
- 白金に比べて比重が約2分の1のため、白金よりもコストパフォーマンスが良い。
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短所 |
- 鋳造の際に、水素、酸素、炭素等のガスを吸収しやすい。
- 吸収したガスを、陶材焼成の際に放出する可能性が高くなる。
- 合金に対する含有量が多くなると、鋳造の際に金属金属劣化を起こしやすくなる。
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銀(Ag) |
特徴 |
- 光の反射率が極めて高く、元素記号の Ag も、ラテン語の「輝くもの」=argentumに由来しています。非常に柔らかい金属です。
- 貴金属に分類されますが、
化学変化を起こしやすく、空気中に放置しておくだけで、徐々に黒っぽく変色してきます。これは、空気中に含まれている硫化水素と自然に化合し、硫化銀と化すためです。
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長所 |
- 合金の融点を下げる。
- 合金の熱膨張係数を上げる。
- 金合金の延性を上げる。
- コストの低減。
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短所 |
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銅(Cu) |
特徴 |
- 銅は赤褐色の柔らかい金属です。銀の次に導電性が高く、加工がしやすい金属で、脆さがありません。価格も比較的安い事から電線・ケーブルの材料としてよく使われています。
- 人類が銅を利用し始めたのは大変古くからで、紀元前3000年頃には、青銅(銅とスズの合金)や、真鍮銅と亜鉛の合金)などの、銅の合金が製造されていたようです。
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長所 |
- 合金を硬くするが、脆くしないため、機械的性質が向上する。
- 金、白金、パラジウム、銀と合金化して時効硬化する。
- 偏析の少ない合金を作ることができる。
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短所 |
- 含有量が多くなると、耐食性が悪くなる。
- 陶材を黒っぽくしてしまう。
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水銀(Hg) |
特徴 |
- 水銀とは、亜鉛族元素のひとつで、常温で液状である唯一の金属です。無臭で流動性がある銀色の液体金属で、蒸発しやすく、他の金属と容易に化合します。
- 水銀、または水銀化合物を吸収することによって、水銀中毒が発生するおそれがあるため、取り扱いには注意が必要です。体内への吸収経路としては、 飲食などによる経口摂取、皮膚との接触などによる経皮吸収、揮発した蒸気による経気吸入があります。
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長所 |
- 合金化が容易。
- 機械的性質(圧縮強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ、硬度等)が強くなる。
- 安価でコスト性が向上する。
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短所 |
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コバルト(Co) |
特徴 |
- 銀白色で、鉄より酸化されにくく、酸やアルカリにも強い金属です。コバルトは磁性が強く、生産量の約1/4が磁石の製造に消費されています。単体で用いられることは少なく、合金として利用されることが多い金属です。
- 人類がコバルトを利用し始めたのは大変古く、古代エジプト文明などで、ガラスに青色を付けるのに使用されていました。
- 医療分野においては、中性子を照射して変化したコバルト(コバルト60)を、放射線治療に利用することがあります。
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長所 |
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短所 |
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クロム(Cr) |
特徴 |
- きわめて硬い結晶性の灰色の金属です。クロムの化合物には、多彩な色調のものが多いことから、ギリシャ語のchroma(色の意)にちなんでクロムと名付けられました。
- めっきや合金の材料として広く利用されている元素で、ステンレス鋼には18パーセント程度のクロムが含まれています。
- 希塩酸、希硫酸には溶けますが、強い酸には反応しにくいという特徴があります。また、クロムに1%程度のマンガンを混ぜると反強磁性金属となります。
- クロム原子には本来24個の電子が含まれていますが、6個の電子を失ったものが存在し、6価クロムと呼ばれています。6価クロムが体内に侵入すると、細胞や体内ホルモンに損傷を与える毒性がありますが、6価クロム以外のクロムは、糖代謝に関わる、体に必要なミネラル(微量金属)の1つです。
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長所 |
- 粘りと強度が増し、摩擦に強くなる。
- 耐食をが向上させる。
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短所 |
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亜鉛(Zn) |
特徴 |
- 単体は銀白色の金属で、湿った空気中では灰白色となり、酸にもアルカリにも溶解します。鉄板にめっきしてトタン板として、また、真鍮(しんちゅう)や洋銀などの合金に使われています。常温では脆いですが、摂氏約 110℃〜150℃の範囲のみで展性、延性に富むようになります。
- 亜鉛は人間にとって栄養上欠かすことのできないミネラル、必須微量元素の一つですが、大量に摂取されると過剰症を引き起こし、鉄分や銅の欠乏を招く可能性があります。
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長所 |
- 脱酸材として効果的で、合金の流動性が高まる。
- 合金の融点を下げる。
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短所 |
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スズ(Sn) |
特徴 |
- 銀白色の柔らかい金属。スズは人類が最も古くから利用している金属の1つです。
- スズと銅の合金である青銅(ブロンズ)製の器具や武器が広く使われた時代は、「青銅器時代」として知られています。缶詰などに使用されている「ブリキ」は、鉄にスズをメッキしたものです。
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長所 |
- 合金を強化する。
- 陶材と合金との科学的結合が強固になる。
- 脱酸材として働き、合金の流動性を向上させる。
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短所 |
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インジウム(In) |
特徴 |
- インジウムは軟らかい銀白色の金属です。常温の空気中では安定しており、酸には溶けますが、アルカリや水とは反応しません。
- 融点が低いので、低融点合金である「はんだ」などに利用されてきました。
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長所 |
- 陶材と合金との科学的結合が強固になる。
- 脱酸材として働き、合金の流動性を向上させる。
- 偏析の少ない合金を作ることができる。
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短所 |
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ルテニウム(Ru) |
特徴 |
- 銀白色の硬くて脆い金属です。腐食しにくく、比重が大きいのが特徴です。
- ルテニウムは白金と共存していることが多い元素で、白金と似た特徴を持っています。酸化力の強い酸には溶けます。
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長所 |
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短所 |
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イリジウム(Ir) |
特徴 |
- イリジウムは硬くて脆い青色の金属で、耐食性に優れた白金族元素のひとつです。比重が高く、最も重い物質の一つです。
- イリジウムは腐食に対する抵抗力が最も強い金属です。熱した王水にも、なかなか溶けません。しかし、加工性に乏しく、単独での使用は困難です。
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長所 |
- 微量の添加で合金の結晶が微細化する。
- 他の金属、特に白金族元素の強度を増す。
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短所 |
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ガリウム(Ga) |
特徴 |
- ガリウムは青っぽい銀白色の金属で、融点は29.8℃と低いが、一方、沸点は摂氏 2000℃以上と非常に高いのが特徴です。酸やアルカリに溶けます。
- 亜鉛鉱石の不純物として、あるいはボーキサイトからアルミニウムを精製する際の副産物として、ガリウムは得られています。
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長所 |
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短所 |
- 添加量が多くなると、不安定な酸化膜が生成しやすくなり、接着強度が弱くなる。
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